
かわら版 No.1513 『協調介入』
2026/08/17
行き過ぎた円安を是正するため政府・日銀は5月、過去最大となる約11.7兆円を投じて為替介入しました。しかし、その効果は短く乏しいものでした。7月下旬には約39年半ぶりの1ドル=163円台まで円安が進みました。
歴史的な円安に危機感をもった政府・日銀は7月30日、約6兆円規模の円買いの単独介入を実施しました。サプライズだったのは翌31日、5兆~6兆円規模とみられる日米協調介入を実施したことです。円相場は一時、1ドル=155円20銭まで円高ドル安が進みました。
日米の協調介入は2011年の東日本大震災直後以来15年ぶり。この時は円高是正のための円売りの介入でした。しかも、米国だけではなくG7(主要先進7か国)による協調介入でした。「そのとき」の財務大臣は私でした。
震災後に保険会社が保険金の支払いのために、ドル資産を売って円を調達するという投機筋の思惑により、一挙に5円近くも円高が進みました。津波で大きな被害が出ているときに、経済金融の大津波が重なることに危機感を抱いた私は、単独介入も辞さない決意でした。
幸い米国のガイトナー(当時の)財務長官にご賛同いただき、彼の説得によりG7も足並みを揃えてくれました。マーケットが開いて日本が介入を始め、各国も続くように動きました。投機筋が惹き起こした市場の過度の変動を抑制するため、米国を中心に国際社会が連帯してくれたことに、鳥肌が立つような感動を覚えました。
さて、今般の日米協調介入について、高市政権は「日米通貨同盟の完成形だ」と胸を張り、トランプ米国大統領は「友情の証しだ」と美談化しています。が、これらの言葉を額面通りに受け取ることはできません。
米国は11月の中間選挙を控え、円安と長期金利の上昇が米国経済に悪影響を及ぼすことを懸念し、介入に踏み切ったのでしょう。積極財政と金融緩和を志向する日本に対し、財政金融政策の転換を迫ったとみるべきです。
ところが、高市政権は財源を確保することなく、食料品の消費税減税を閣議決定しました。減税は総理の悲願だった(?)そうですが、財源が示されなければまっとうな政策ではありません。
しかも、来年度予算の編成に向け、8月末までに各省が概算要求を提出しますが、上限のない「青天井」です。円安の根本的な原因である野放図な財政運営を改めようとしていません。
日米の金利差も円安の根源です。高市政権に気兼ねし、日本銀行による利上げが遅れれば、さらに状況は悪化するでしょう。9月の金融政策決定会合に注目したいと思います。
円安の背景にある日本の財政金融政策に対する不信を払拭しなければ、介入効果は剥落し円安の基調を変えることはできません。