詳細 | かわら版 | 衆議院議員 野田 よしひこ

かわら版 No.992 『そして2年後…。』

2015/05/18

  日本銀行が大胆な金融緩和に踏み出したのは、ちょうど2年前の2013年4月でした。黒田東彦日銀総裁による「マネタリーベース」(日銀が世の中へ供給するおカネの量)を2年間で2倍にふやし、物価を2%上昇させるという宣言は衝撃的でした。以来、円安株高の基調がつくられ、いわゆるアベノミクスが始動したのでした。


  黒田氏のことはアジア開発銀行総裁の頃からよく存じ上げておりました。国際会議でもしばしばご一緒しましたし、彼のプレゼンテーション能力の高さを評価もしていました。したがって、景気は気の面も無視できませんので、日銀のトップに立った黒田氏の明快な言動は、市場から好感されるだろうと思っていました。しかし、数字の2をきれいに羅列したデフレ脱却作戦の実現性については、当初から強く疑問をもっていました。


  約束した2年がたちましたので、しっかりと検証してみましょう。


  マネタリーベースは2013年3月は146兆円でしたが、2015年3月は296兆円と150兆円増え、宣言通り約2倍となっています。ところが、銀行による貸出総額は2013年3月は441兆円でしたが、2014年12月は約461兆円と、金額にして20兆円、率にして5%しか増えていません。


  では、日銀が金融緩和を実施して供給したおカネはどこへ行ったのでしょうか。日銀の当座預金は2013年3月は58兆円でしたが、2015年3月は201兆円と143兆円も増えています。すなわち、日銀が大量に供給しているおカネは、銀行を通じて企業の設備投資や皆さんのマイホームづくりなどに貸出されているのではなく、日銀の金庫の中で眠っているだけなのです。


  バブルで株価は上昇していますが、これでは国民の暮らしが良くなるとは思えません。2年後に2%のインフレを起こすという目標も、現在の物価上昇率は0%ですから実現されていません。


  黒田総裁以上に「2年後に2%のインフレを起こす」と強気の発言を連発してきたのは、岩田規久男副総裁です。彼は、国会において「達成できなかったとき、最高の責任のとり方は辞職すること」と明言していました。また、就任時の記者会見では、「達成できなかった時に、自分たちのせいではない、他の要因によるものだと、言い訳しない。そういう立場に立たないと、市場が金融政策を信用しない。市場が金融政策を信用しないと、いくら金利を下げたり、量的緩和しても、効き目が無いというのが私の立場です」と、言い放っています。


  確かに、日銀幹部の重要な役割は、マーケットとの対話です。果たして大有言不実行の岩田副総裁を市場は信用しているのでしょうか。

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