詳細 | かわら版 | 衆議院議員 野田 よしひこ

かわら版 No.999 『甘い財政計画』

2015/07/06

  ギリシャの債務不履行により、同国の銀行は預金取り付け騒ぎで破綻直前です。株も世界的に下落しています。混迷を極めるギリシャ問題の行方について、しばらくは緊張感をもって注視していかなければなりません。


  わが国の現在の借金は1千兆円を上回り、国内総生産(GDP)の200%を超えます。財政危機で混乱しているギリシャですら驚くような数字です。それにもかかわらず、6月30日に政府が閣議決定した経済財政運営の基本方針(骨太の方針)に盛り込まれた財政健全化計画は、危機感と覚悟が完全に欠如していました。


  2010年6月、私が財務大臣当時にまとめた「財政運営戦略」と同じく、政府は国と地方をあわせた基礎的財政収支(プライマリーバランス)を2020年度に黒字化する目標を掲げています。プライマリーバランス(PB)は、社会保障や公共事業、教育や防衛などの政策に必要な予算を、借金せずに税収や日銀納付金などの税外収入でまかなえるかを見る指標です。PBの黒字化とは、その年の政策経費を将来に負担を先送りすることなく、その年に入ってくる税収等の収入で賄うという意味です。PBの黒字化目標は、財政健全化のゴールではなく、一里塚に過ぎません。しかし、安倍政権が決めた財政健全化計画では、その一里塚に到達できるかどうか極めて疑問です。


  まず、高い経済成長率を前提にしており、甘いと言わざるを得ません。実質で2%程度、名目で3%程度を上回る経済成長シナリオは楽観的過ぎます。高い成長率を前提に置けば、税収が高く伸びる姿を描けます。その分、収支を良く見せかけることができます。そして、痛みを伴う歳出削減や増税の議論から逃げることになります。やはり、経済成長率は慎重な前提に立つべきです。そうでなければ、本気で財政再建の道筋を考えていると信認されないのではないでしょうか。


  しかも、骨太の方針と併せて閣議決定された成長戦略も、「トホホ」でした。特に、大胆かつ斬新なものはありませんでした。いつまでも、A(アセット)B(バブル)E(エコノミー)、資産バブル経済が続くと思っていたら大間違いです。


  また、なぜ2020年までという中途半端な財政計画にしたのでしょうか。団塊の世代がすべて75歳以上(後期高齢者)になり、医療、年金、介護などの社会保障費が大きく膨らむ2025年度までの見通しこそ明らかにすべきだと思います。


  かつて、野党時代の自民党は具体的な数値目標を盛り込んだ「財政健全化責任法」を強く提唱していました。決して、成長一本槍ではなく責任ある態度でした。政権党になった途端、その精神を忘れ財政規律が緩んでしまったようです。その無責任さが借金大国・日本をつくった元凶だと思います。

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