詳細 | かわら版 | 衆議院議員 野田 よしひこ

かわら版 No.1018 『迷走する税制論議』

2015/11/30

  一定の品目について消費税率を低く抑える軽減税率を巡り、与党間の協議が迷走しています。
自民党は、医療や介護、子育てなどの自己負担額に上限を設ける「総合合算制度」の見送りで生まれる約4千億円を財源に充てようとしています。同制度は低所得者対策を目的に導入しようとしていたものです。その財源を高額所得者も恩恵に浴する軽減税率に回すことになります。逆進性対策としては本末転倒ではないでしょうか。


  公明党は、軽減税率の対象をできるだけ広げようという立場です。そのために消費税収以外の税収も投入して、1兆円規模の財源を確保する考えです。これは、消費税収は全て社会保障に使うという一体改革の魂を忘れています。消費税の増税か否かは「増税か反増税」ではなく、「増税か社会保障費の抑制」で判断されなければなりません。事の本質も見失っているのではないでしょうか。


  逆進性対策は必要ですが、消費税率の10%に引き上げ時に拙速に軽減税率を導入すべきではないという、私の考えは既述しておりますのでこれ以上繰り返しません。


  法人税の実効税率をさらに引き下げようという動きにも、強い疑問をもっています。


  企業収益は過去最高の水準にあります。「法人企業統計調査」によりますと、2012年度と2014年度を比較しますと、経常利益は、16.1兆円も増加しています。しかし、この間、設備投資には5.1兆円しか振り向けられていません。従業員給与・賞与にいたっては僅か0.3兆円しか伸びていません。


  この結果、企業の手元資金の増加が続いています。企業が稼いだ利益の積み重ねである「内部留保」は、2014年度は前々年度から約49.9兆円増の354兆3774億円となり、過去最高を記録しました。


  要は、企業収益は好調ですが、そのお金が設備投資や賃上げに回らず、経済の好循環を阻んでいるということです。この上に法人税を減税しても、更に内部留保が溜まるだけではないでしょうか。


  財政が厳しい時に法人税引き下げが検討されるのは、「法人税パラドックス」に期待があるからでしょう。これは法人税率を引き下げても、景気が良くなり法人税収はむしろ増加するという現象です。かつて、欧州等で観察されたことがあります。しかし、日本では法人税率を引き下げると税収は減り、パラドックスは実現したことがありません。


  税収は減り、内部留保が積み上がるだけの法人税減税なら意味がありません。

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