詳細 | かわら版 | 衆議院議員 野田 よしひこ

かわら版 No.1020 『新旧「3本の矢」について』

2015/12/14

  安倍政権が誕生してまもなく3年になります。比較的に高い内閣支持率を保っているのは、成果の誇張によるのではないでしょうか。アベノミクスのもとの3本の矢を検証すれば、明らかです。


  第1の矢の異次元の金融緩和により、株は高くなり大幅な円安になり、大企業は空前の利益を出しました。しかし、円安は中小企業を苦しめ、実質賃金も下がり続け国民生活でもメリットはありませんでした。経済の好循環が起きなかった上に、2%の物価目標も達成できていません。


  日銀による大規模な国債買い入れの出口が心配です。日銀は国債を買い続けることをやめられるのでしょうか。日銀は抱え込んだ国債を売却できるのでしょうか。異次元の金融緩和は、異次元の副作用をはらんでいます。


  第2の矢である機動的な財政政策は、要は公共事業を増やすことであり、時代錯誤の的外れです。3本目の矢である成長戦略については、特筆するものはなく的に届いていません。


  これではじり貧に陥ると危機感をもったのでしょうか。無投票で自民党総裁に選出された直後、唐突に新3本の矢なるものを打ち出しました。言うのは簡単ですが、いずれも出来もしない絵空事です。


  まず、名目国内総生産(GDP)600兆円を2020年ごろまでに達成するという新第1の矢は、道筋が見えません。2014年度の名目GDPが約488兆円ですから、名目経済成長率3%以上、実質経済成長率2%以上が続けば、計算上は届きます。しかし、バブル崩壊後、名目成長率が3%を上回ったことはありません。しかも現在の日本の潜在成長率は0.3%程度であることを考えると、実現可能性はないと見るべきでしょう。


  20年代半ばまでに希望出生率1.8を実現するという新しい第2の矢も、具体策が不明です。近年の合計特殊出生率は1.4台の横ばい状態です。その上、先の通常国会では労働者派遣法が改悪され、非正規雇用が拡大する可能性が大です。結婚できない、子どもを産めない若者を増やして、どうして出生率が上がるのでしょうか。やっていることがあべこべです。


  新第3の矢である介護離職ゼロも実行可能性が極めて疑わしいと思います。目標を達成するには、介護施設を増加させると共に、介護現場で働く人々の待遇を改善し必要なマンパワーを確保しなければなりません。しかし、安倍政権は介護報酬を先般切り下げました。これまたあべこべではないでしょうか。


  米国の次期大統領指名選挙においては、デマゴーグのような言説を弄する人が、人気を博しています。日本も非現実的な政策で国民を幻惑する人が、国のトップです。両国ともに直面する諸問題の重大さや複雑さについて、正直に国民に語らなければいけないのではないでしょうか。

活動報告一覧へ戻る
HOMEへ戻るpagetop