かわら版 No.1026 『甘利大臣辞任』
2016/02/01安倍政権の屋台骨を支えてきた甘利明経済再生相が、週刊誌が報じた違法献金疑惑の責任をとり辞職しました。舌ガンという病魔を克服し、タフなTPP交渉の先頭に立って頑張ってきた働きぶりには、私は敬意の念を抱いていました。しかし、甘利氏本人及び秘書のあっせん利得処罰罪や虚偽記載による政治資金規正法違反の疑いは濃く、大臣辞任は当然です。疑惑の解明はまだ続きますが、議員辞職も免れないかもしれません。
それにしても不可思議なことがたくさんあります。口利きを依頼した白井市の建設会社はトラブルが多いという評判であり、地元議員たちは距離を置いているそうです。そんな筋の良くないローカルな会社と、神奈川県内を選挙区とする有力閣僚がなぜ接近したのでしょうか。
金銭の授受が大臣室で行われたことにも、大変驚きました。私も財務大臣を務めたことがありますが、私企業の個別要請を聞くために大臣室を使うなど到底考えられません。甘利氏が「罠にハメられた」と同情する自民党幹部もいますが、脇が甘過ぎです。告発者を「ゲスの極み」だと言い放った派閥の領袖もいましたが、大臣室で金銭授受が常態化していたのではと疑いをもってしまうのは「ゲスの勘ぐり」でしょうか。
甘利氏は大臣室及び地元事務所で、それぞれ50万円受け取ったことを認めています。自民党議員にとって50万円くらいの金額は、気軽に受け取れる政治文化なのでしょう。私は、50万円の献金を集めるのに四苦八苦した経験があります。
私は、平成8年の総選挙で全国1の僅差で落選しました。所属していた政党も解党し、孤立無援に陥りました。わが家は路頭に迷う寸前でした。その絶体絶命の大ピンチを救って下さったのは、50人の支援者です。毎月1万円の献金をいただきました。銀行振込ではご縁が薄くなってしまうので、月末に私が各々をお訪ねし活動報告を行い、その場で浄財をいただき領収書を書きました。自営業、サラリーマン、年金生活者といった皆さんの虎の子1万円の有難みと、月々50万円集めることの困難が身に沁みました。
毎月1人1万円、合計50万円の献金は、平成12年に国政復帰するまで続きました。その恩人たちの中には、私が総理になる前に他界してしまった方々も少なからずいらっしゃいます。
甘利氏の政治とカネを巡る疑惑の解明は、これからも徹底していかなければなりません。当然、総理の任命責任も厳しく問われなければなりません。ただし、他者の批判や指弾をするだけではなく、自らの政治活動の原点に立ち返り、改めて襟を正す機会にしたいと思います。