詳細 | かわら版 | 衆議院議員 野田 よしひこ

かわら版 No.1040 『五輪前のリスク』

2016/05/16

  ゴールデンウィーク中、幸田真音著「この日のために」(上・下)を読みました。1964(昭和39)年の東京五輪を実現させた人たちの熱いドラマが見事に描かれています。特に、首都大改造、東海道新幹線の建設などを指揮し、所得倍増計画を掲げ経済成長を牽引した当時の池田勇人首相は、病魔に侵されながら五輪本番を迎えます。その強い責任感と使命感には深く感動しました。


  一方で、2020年のオリンピック・パラリンピックの東京開催については、とても不安が募ってきました。新国立競技場のデザインやエンブレムの問題は何とか解決することができました。しかし、五輪開催前の環境整備として2つの大きな関門が残っています。50余年前は幾多の困難を克服して大会を成功させましたが、今回は大ハードルを乗り越えることができるでしょうか。


  第1は、財政です。わが国は2020年に基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化する目標を掲げています。この国際公約を実現するためには、消費税の10%への引き上げは不可欠です。しかし、アベノミクスの成果が上がらず経済が低迷する状況が続き、安倍政権は増税に踏み切れないのではないでしょうか。そもそも、税金を喜んで払いたい人はいません。できるものなら誰しも免れたい、先延ばししてほしいと願っています。この人情に流されれば国家財政はもちません。財政への信認を失えば、国債はもちろん社債の格付けも下がり、わが国は東京五輪の前に破綻への道をまっしぐらです。


  第2は、金融です。量的・質的金融緩和を3年間続けてきましたが、いまだにインフレ率2%という目標に届いていません。そして、2%到達予測を17年度中へと再び先送りしました。マイナス金利政策も導入しましたが、その深掘りをしても効果があるのでしょうか。日本銀行による緩和手段の限界を強く感じざるをえません。そこで、異次元の金融緩和の出口が重要になってきます。が、容易に見つかるとは思いません。年間に80兆円も日銀が国債を引き受けています。日銀が事実上財政をファイナンスしていることは、東京五輪の前により複雑で深刻なリスクを惹起することになるでしょう。


  リオデジャネイロ五輪の開幕まで約3か月に迫ったブラジルは、深刻な景気低迷や大規模な汚職スキャンダルに直面しています。ルセフ大統領は弾劾に問われ、失職の危機にあります。これらの混乱が五輪に与える影響が心配されています。


  4年後の東京五輪の成功も、極めて大きな国難の克服が前提となります。

 

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