詳細 | かわら版 | 衆議院議員 野田 よしひこ

かわら版 No.1050 『陛下のお言葉』

2016/08/22

  天皇陛下が「生前退位」の意向を強く示唆されました。ビデオメッセージを通じて、「お気持ち」を表明するという形式でした。このような異例の展開になったのは、政治の不作為が最大の原因です。私も関係者の1人として、猛省しています


  陛下はご自身の存在を憲法第1条の「国民統合の象徴である」ことを強く意識され、憲法第7条に規定されている種々の国事行為を行われています。これに伴う公務は、閣議決定書類への署名・押印が年間約1千件、晩餐会などの主催行事が約200件など、実に様々です。


  今上天皇はそれらに加えて、阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震など被災地への慰労、サイパン、パラオ、フィリピンなど先の大戦の激戦地における慰霊など、新たな公務を開拓してこられました。


  陛下はこれらの国事行為や公務をしっかりと行うことが象徴天皇の責務であると自負されており、公務負担軽減や天皇の国事行為を代行する摂政の設置については、お言葉の中で改めて望ましくないことを明らかにされました。


  自分が元気なうちに次の皇位継承者に引き継ぎたいというお気持ちを素直に受け止め、超高齢社会における象徴天皇制や皇室のあり方を考えるのが筋でしょう。事の重大さから拙速な議論は慎まなければなりませんが、陛下の年齢を考えると時間をかけ過ぎることもできません。


  皇室典範には生前退位の規定がなく、その第4条に「天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する」とあるだけです。まず焦点になるのは、明治憲法ができた当時のままの内容となっている現行の皇室典範の改正に踏み込むのか、一代限りの特例法で対応するかです。私は陛下の問題意識を恒久的かつ普遍的なものと受け止めるならば、その場しのぎの特例法で対応するのではなく、皇室典範を改正すべきだと思います。


  平成に入り、典範改正に挑んだことが2回あります。


  最初は、小泉内閣。05年11月、有識者会議が女性天皇や母方が天皇の血筋を引く「女系天皇」を認める最終報告書を提出しました。しかし、悠仁さまのご誕生があり、また、男系主義を主張する一部保守派の強い反発もあり、立ち消えになってしまいました。


  2回めは、野田内閣。男系か女系かといった皇位継承問題を切り離し、皇族減少の対応に絞って有識者からヒアリングを行いました。そして、女性皇族が結婚後も皇室にとどまる「女性宮家」の創設などを検討する論点整理を、12年10月に公表しました。しかし、同年末の総選挙で敗れ、頓挫してしまいました。


  両政権は共に、皇位継承権を持つ男系男子が少なく、安定的な皇室運営を続けることが難しいという危機感がありました。


  「象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ…」と、陛下もお言葉の最後に結んでいます。典範改正については、生前退位に限ることなく、もう少し幅広に検討すべきでしょう。

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