詳細 | かわら版 | 衆議院議員 野田 よしひこ

かわら版 No.1070 『損得外交』

2017/01/16

  昨年12月の初め、キャロライン・ケネディ駐日米国大使と親しく昼食を共にしました。ジョン・F・ケネディ第35代米国大統領の長女であり、女性として初の駐日米国大使でしたので、皆様もよくご存知だと思います。大使は今月18日に離日します。約3年半の短い滞在期間でしたが、オバマ大統領の広島訪問を実現させるなど、日米関係の強化に大きく貢献されたと思います。私とは同い年なので、米国大統領選のこと等について、ざっくばらんに意見交換することができました。ケネディ大使が固唾を飲むような緊張した思いで注目していたのは、次期国務長官の人事でした。トランプ新政権の中で最も世界的影響力のある重要なポストは、米国の外交政策を担う国務長官だからです。当初は共和党の有力上院議員やニューヨーク州の前知事の名前が挙がっていました。

  ところが、大使との会食の数日後、国務長官に指名された人物は、大方の予想を覆し、レックス・ティラーソンというエクソンで約40年にわたり海外展開事業に携わってきたビジネスマンでした。米国では民間人が政府の重要ポストに起用されることは一般的ですが、今回のエクソンCEOの国務長官指名は、米国の外交方針の全面的転換につながりかねず、その背景をしっかり分析しなければなりません。


  まずは、ロシアとの関係です。オバマ政権はロシアのウクライナ介入によるクリミア併合に対し、対ロ経済制裁を主導しました。米国大統領選の際のロシアによるハッカー攻撃についても、厳しく指弾しています。しかし、トランプ氏は一貫してロシアに対しては融和的です。ティラーソン新国務長官は、かつてサハリンの天然ガスプロジェクトの責任者を務めたことがあり、以来プーチン大統領とは長く親密な付き合いが続いているそうです。今後の米ロ関係に注目したいと思います。


  次は、中東の政治力学の変化です。オバマ大統領は、イランとの困難な交渉を経て核合意し、同国への経済制裁を解除しました。この動きに対して、イランとはライバル関係にあるもう1つの中東の雄であるサウジアラビアは強い不満をもっています。トランプ氏の関連会社もエクソンの最大拠点もサウジにありますが、米国が急速にサウジとの関係改善に舵を切れば、イランとの関係が緊迫するでしょう。そうなれば、原油価格にも大きな影響が出るでしょう。


  エクソンは、これらの地域の他にも、南シナ海、北極海、中南米など世界中に権益を有しています。新国務長官が私企業の利益のために働くとは思いませんが、トランプ政権が取引とその利益を重視する「損得外交」に陥る懸念は、残念ながら払拭できません。


  ケネディ大使の父ジョン・F・ケネディは、理念や価値観を重視した大統領でした。その対極にある人物が、1月20日、大統領に就任します。
 

 

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