詳細 | かわら版 | 衆議院議員 野田 よしひこ

かわら版 No.1074 『間合い』

2017/02/13

  米国新政権による保護主義化に対して、先行き不透明感が高まっています。人道を軽視したり国内外を分断する動きに対する懸念も、世界各国に蔓延しています。そのような中、10日から13日の日程で安倍総理は米国を訪問しました。


  正規の首脳会談のみならず、複数回にわたる会食なども含めると、トランプ大統領とは十分に議論できたはずです。その際、自由、民主主義、人権、法の支配といった基本的価値観を共有するために突っ込んだ話をしたのでしょうか。世界の首脳たちはこの点において新大統領の政治手法に疑問をもっており、慎重に間合いを測っているところです。安倍総理は、一挙に間合いを詰めすぎたのではないでしょうか。


  4年余の間、安倍総理は百か国以上を訪問し、官民合わせて計54兆円もの経済協力を約束してきました。この小切手外交の成果をしっかりと検証しなければなりませんが、今回の訪米では、米国内のインフラ投資などで市場を創出し、多くの雇用を生み出す経済協力を提案しました。こんなにお土産を持参しないと、日米関係が軋んでしまうと恐れたためでしょうか。


  移民や自由貿易によって雇用が失われたと信じる低所得の白人層からの強い支持で当選したトランプ大統領は、米国の貿易赤字が米国経済の足を引っ張っていると考えています。そして、悪いのは貿易相手国だと思い込んでいるようです。貿易収支は貿易政策の結果というよりも、製品の国際競争力、内外の景気動向などによって左右されるという経済学のイロハがわかっていないようです。


  米国が貿易赤字を計上している最大の国は中国ですが、続いて第2位が日本です。トランプ氏が日米貿易不均衡を批判する際、特にやり玉に挙げるのが自動車市場ですが、全くの事実誤認です。日本からの米国への輸出は乗用車もトラックも関税がかけられていますが、米国は日本に関税ゼロで輸出できるのです。開かれた日本市場で欧州車は売れてきましたが、米国車は振るいません。その理由は、不公正とは全く関係ありません。


  日本企業による米国企業の買収や現地工場の建設など日本から米国への投資を示す「対米直接投資額」は17兆6586億円。G20では第1位です。日系企業は英国に次いで、世界で2番目、80万人を超える雇用を生み出しており、特に製造業では、日系企業が外資系企業の中では米国内で最も多くの雇用(約38万人)を生み出しています。


  このような共存共栄の実績を理性的に粘り強く説明することが何よりも重要であり、安易に巨額の経済協力を申し出ることは、「米国第一主義」のお先棒を日本政府が担ぐことになるのではないでしょうか。


  日米同盟は重要です。首脳間の信頼関係を築くことも大事です。が、一緒にゴルフに興じる姿は、国際社会からは突出した蜜月関係に映るでしょう。間合いを縮め過ぎです。

活動報告一覧へ戻る
HOMEへ戻るpagetop