詳細 | かわら版 | 衆議院議員 野田 よしひこ

かわら版 No.1207 『湯の中の蛙(かわず)』

2020/01/27

  安倍総理の施政方針演説の中で、次のようなくだりがありました。 「来年度予算の税収は過去最高となりました。公債発行は8年連続で減額であります。」


  この言葉を聞いて、議席に座りながら立ちくらみしそうになりました。今年度は増税をしたにもかかわらず、税収見通しを2兆3200億円も下方修正した反省がありません。来年度の税収見通しを実績のように印象操作しています。


  確かに当初予算では新規国債発行額は減額が続いています。しかし、税収が不足し年度途中に補正予算を組んで国債を追加発行する、これが安倍政権の常習的手口です。決算ベースでは減額が続いているわけではありません。


  総理の演説は、さらに次のように続きました。


  「引き続き、2025年度のプライマリーバランス黒字化を目指します。」


  この目標を実現できると思っている人は、永田町にも霞が関にも皆無でしょう。誰も信じないようなことをいけしゃあしゃあと言ってのける厚顔は、小さな嘘の積み重ねから真っ赤な大嘘をつくことにも鈍感になったからでしょうか。


  プライマリーバランス(基礎的財政収支=PB)の黒字化とは、政策経費を借金に頼らずにその年度の税収などでまかなえるようにすることです。PBの黒字化は小泉政権以来、財政健全化の目標として掲げられてきましたが、先送りの連続でした。安倍政権も当初は20年度をめざしていましたが、2年前に25年度へと5年も先送りしました。


  目標を先送りしたばかりなのに内閣府が1月17日に公表した試算によると、高い経済成長が続く大甘のケースでも25年度に3.6兆円の赤字になります。現状から乖離した楽観的試算でも、黒字化を達成するのは27年度となります。現実的な数字を前提に試算すれば、目標達成は絶対不可能です。


  安倍政権の下で、財政健全化は遠のくばかりです。2022年からは団塊の世代が後期高齢者になり始めますので、社会保障費はますます膨らみます。本気で財政再建の道筋を示し、本気で歳出と歳入の改革に取り組まなければならないのに…。


  安倍政権の放漫財政を許しているのは、金融政策一辺倒のリフレ派政策や過度なインフレにならない限り借金を重ねてもいいとする学説に飛びつく風潮だと思います。カエルを熱湯の中に入れれば驚いて飛び出しますが、常温の水に入れ徐々に熱するとカエルは気づかぬうちにゆであがって死にます。日本財政は「ゆでガエル」状態です。


  大海を知らない「井の中の蛙」よりも、ゆであがって死ぬ「湯の中の蛙」のほうがより危機的です。厳しくても逃げられない現実を直視し、揺るぎない信念で財政規律の重要性を訴え続けていくしかありません。


  

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