詳細 | かわら版 | 衆議院議員 野田 よしひこ

かわら版 No.1261 『特例公債法改正案』

2021/03/15

  財政法は、借金に頼った財政運営を原則として禁じています。そのため、歴代政権は赤字国債を発行できるように毎年度、1年限りで認める「特例公債法」を成立させてきました。


  ところが、東日本大震災が発災した2011年は民主党の菅直人政権(私は財務大臣)でしたが、衆参両院の多数派が異なる「ねじれ国会」で法案審議が進みませんでした。予算は3月末に成立したものの、その財源の裏付けとなる特例法成立の見通しがなかなか立ちませんでした。結局、野党自民党の要求を受け入れ、菅政権が退陣することにより、8月末に同法を成立させました。


  私が総理だった翌2012年は、特例公債法の成立がもっと大幅に遅れました。地方交付税の交付を先送りするなど、予算執行を抑制せざるをえなくなり、国民生活や経済へ悪影響を及ぼし始めました。そして、国庫が枯渇する寸前の11月16日、2012年度から2015年度まで4年間の赤字国債発行を可能とする法案に修正し、やっと成立させることができました。


  憲法第60条は、予算議決に関する衆議院の優越を定めています。しかし、ねじれ国会により参議院で特例公債法が人質にとられたら、予算を執行できなくなり憲法の規定が骨抜きになるのです。どの党が政権をとっても、どの党が野党になっても、そんな国民不在の権力闘争はやめようというのが法案修正の本意でした。


  安倍政権下の2016年法改正で、特例期間が4年から5年に延びました。本年3月末に期限切れを迎えるため、現行法を5年間再延長する「特例公債法改正案」を政府は今国会に提出しました。そして、同法案は衆院を通過し、参院で審議中です。


  財政法上、赤字国債の発行は「特例」の措置です。その赤字国債の発行の複数年度化は「特例の特例」です。その特例の特例が常態化していることに、強い危機感をもつべきです。にもかかわらず、2016年改正では2020年度までに基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化をめざすと明記されていましたが、今般の提出法案には財政健全化目標を具体的に書き込んでいません。


  特例公債の多年度発行の端緒を開いたのは私です。しかし、その後、4年が5年になり、財政健全化目標も曖昧になり、法改正のたびに財政規律がゆるんでしまいました。


  戦後初の赤字国債発行は、東京五輪後の不況下の1965年でした。その10年後の1975年、赤字国債の発行を余儀なくされた当時の大平正芳蔵相は「死ぬほどつらい」と、もらしたそうです。


  もはや、国会はねじれていません。先人が「死ぬほどつらい」と思ったことに全く痛痒を感じなくなっている今こそ、財政健全化の観点から、赤字国債の発行は単年度ごとに国会による民主的統制を経るように元に戻すべきです。

  

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