詳細 | かわら版 | 衆議院議員 野田 よしひこ

かわら版 No.1279 『匹夫の勇』

2021/08/02

  高校時代は柔道部員でした。試合開始8秒で体落としが決まり、1本勝ちしたことがあります。逆に、5秒で宙に浮かされ、1本負けしたこともありました。私を秒殺した相手は全国大会に出場し、「日本柔道界最強の男」と称された山下泰裕さんに3秒で瞬殺されました。「上には上がいるなぁ」と、つくづく感じました。自分より下はあまりいませんでしたが…。


  世界の頂点に立つ者を決するオリンピックの柔道競技が、7月24日から31日まで行われました。男女各階級の激闘を通じ、改めて柔道の醍醐味を満喫することができました。他の競技においても、5年間も苦しい練習に耐えてきたアスリートたちが全力で力と技を出し尽くす姿に、深く感動しました。


  開会前にはあきれ果てるようなドタバタ劇が相次ぎ、ワクワク感よりも不安感が渦巻く中で五輪が始まりました。しかし、日本勢の空前のメダルラッシュにより、TV中継の視聴率は総じて高いようです。官邸サイドは「始まれば、日本の金メダルラッシュで不安は吹き飛ぶ」と期待し、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長も「日本の方は大会が始まれば歓迎してくれる」と、会見しました。表面的には彼らの思惑通りに盛り上がっているように見えますが…。


  新型コロナウイルスの国内感染者数も最多を更新し、東京と沖縄に加え、千葉、埼玉、神奈川、大阪にも緊急事態宣言が発令されました。五輪のまっ只中で感染「第5波」が到来しました。「人類がウイルスに打ち勝った証し」(昨年10月の菅総理の所信表明演説)としての五輪開催であったはずなのに…。


  そもそも昨年3月、当時の安倍総理は2年延期も可能だったのに、なぜ1年延期を決断したのでしょうか。なぜ「安全・安心」の大会を掲げる菅政権は、1年延期に間に合うようにワクチン接種を進めなかったのでしょうか。


  菅総理は五輪について、「人流は減少しており、心配もない」と楽観視しています。科学的知見に欠けた発言が多過ぎます。極めつけは海外メディアのインタビューに対し、周囲から「中止が最善の判断」だと助言されたことを披露し、「挑戦するのが政府の役割だ」と強調しています。


  安全・安心の実現に向けて、細心の注意と万全の態勢で挑むことは否定しません。しかし、根拠なき楽観論で突き進んでいるだけだとしたら、孟子の言い残した「匹夫の勇」に過ぎません。すなわち、思慮分別のない血気だけのつまらない勇気、小人物の蛮勇です。


  大会が無事終わるまで、感染対策を徹底してほしいと思います。しかし、東京五輪は8月8日に閉会(パラリンピックは8月24日開会予定)しても、パンデミック(世界的流行)は終わりません。医療崩壊という最悪の事態を避け、生命と健康を守ることに全力を尽くす時です。浮かれている時ではありません。国会も開くべきです。休んでいる場合ではありません。


  

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