詳細 | かわら版 | 衆議院議員 野田 よしひこ

かわら版 No.1315 『物価高と円安』

2022/05/09

  岸田総理は先月末、国費約6.2兆円を充てる物価高騰への緊急対策を発表しました。燃料や食料品などの値上がりが続く中で、困窮する家庭や事業者への支援は急務です。ですから、物価高対策は確かに必要だと思います。


  しかし、その財源として予備費を補正予算で積み増す手法は、税金の使い方として重大な問題があります。予備費は「予見し難い予算の不足に充てるため」にその計上は認められていますが、具体的な使い道を予め決めない「つかみ金」です。その多用・乱用は財政民主主義に反し、厳に慎むべきです。


  令和2年度補正でコロナ向けと銘打って、約10兆円の予備費が創設されました。令和3年度と今年度を合わせると、3年で約20兆円の予備費が計上されました。公用車や遊具の購入などコロナ対策とは思えない事業も散見されます。


  その不透明ながらもコロナ対策に限定していた使途を、物価高対策に流用した上で、さらに積み増すとは言語道断です。巨額予算の政府への白紙委任であり、国会審議を空洞化させ財政規律もゆるみます。


  曲がりなりにも政府は物価を抑制しようとしていますが、日本銀行は物価を上げようと長期金利を0%程度に誘導する金融緩和を続けています。一方、米国の中央銀行にあたるFRBは5月4日、金融緩和で膨らんだ保有資産を圧縮する「量的引き締め(QT)」を実施する上、0.5%の利上げを決めました。この差がジリジリと進む円安をさらに加速させるでしょう。政府と日銀の対応に整合性がありません。


  ところが、異次元の金融緩和などを柱とするアベノミクスを推進してきた安倍元総理は、「今の(円安)水準で右往左往する必要は全くない」「円安に金融政策で対応するのは間違いだ」「黒田総裁の方針は間違っていないし支持したい」と、日銀を徹底擁護。


  元総理の鼻息に押されて岸田総理も、「日銀は2%の物価目標のもとに政策を進めている。この政策については引き続き努力を続けてもらえるよう政府としては期待している」と、金融緩和に理解を示しました。


  私は、新旧総理の発言を支持できません。大胆な金融緩和を9年も続けて効果がありませんでした。メンツにこだわり突き進む先に明るい未来を展望できるのでしょうか。インフレが心配な時は金利を引き上げ円安を防ぎ、輸入価格を安定させることこそ中央銀行の役割ではないでしょうか。


  日本商工会議所が公表した中小企業への円安影響の調査によると、「デメリットの方が大きい」と回答した企業は53.3%。「メリットの方が大きい」と答えた企業はわずか1.2%でした。賃上げが進まない中での輸入物価の上昇は家計も圧迫します。


  円安で一部の輸出型大企業が大きく収益を伸ばしているかもしれません。しかし、大半の中小企業と国民は苦しんでいます。物価高と円安は参院選の大きな争点になるでしょう。


 

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