詳細 | かわら版 | 衆議院議員 野田 よしひこ

かわら版 No.1361 『財政余力』

2023/05/29

  いわゆる「防衛財源確保法案」は衆院を通過し、いま参院で審議が行われています。法案の正式名は「我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法案」。法案の名称に「財源の確保」とありますが、看板に偽りありの欠陥法案です。


  政府は、今後5年間で総額43兆円規模の防衛費を確保するために、約17.1兆円が追加で必要になるとしています。しかし、この法案で確保されるのは国有財産の売却益や特別会計の剰余金など、1回限りしか生じない「税外収入」をかき集めた3.4兆円です。防衛費増額分の約20%に過ぎません。


  その他の財源は、法的に担保されていない上に、中身がスカスカでした。「歳出改革」は具体的な歳出削減の道筋・内容が全く示されませんでした。「決算剰余金」の活用は極めて甘い見積もりが前提になっていました。「防衛増税」として、復興特別所得税の流用を掲げていますが、被災地の皆さんの心情を蹂躙するものであり、論外です。


  私は、自衛隊と海上保安庁の連携強化や自衛官の処遇改善などを、国会審議でとり上げてきました。防衛費増額を是とする立場です。しかし、その財源確保のための枠組みはぐらぐらであり、財務大臣経験者として到底容認できません。


  2011年11月に野田政権下で成立した東日本大震災の「復興財源確保法」は、税外収入だけでなく、決算剰余金、歳出削減、税制措置による財源確保などが全て規定されていました。何より15年間の復旧復興に必要な32.9兆円が百パーセントカバーされた、「フルカバー、フルスペック」の法律でした。


  防衛財源確保法案もいい加減な枠組みを抜本的に見直し、しっかりと安定財源に裏づけられたものに改めるべきです。そうしなければ、結局は借金頼みの防衛力強化に陥ることは火を見るより明らかです。


  12年前の復興財源確保法の財源手当ては堅固な枠組みでした。今般の防衛財源確保法の枠組みは脆弱です。それは、わが国の財政余力がいよいよなくなってきたからでしょう。財政は国の信頼の礎であり、有事であっても日本の信用や国民生活が損なわれないようにするため、平素から財政余力を確保しておくことが不可欠でした。その努力を怠ってきたツケが露わになってきました。


  日本が抱える重要な課題は、安全保障上の脅威の他に、コロナ等の感染症、地震・台風等の天変地異、異次元の少子化対策、DXとGXの推進など、巨額な予算を要するものばかりです。


  しかし、他国に比べて一段と財政状況が悪化する一方、財政支出拡大を支えてきた超金融緩和ももはや限界です。「財源なくして政策なし」の基本に立ち返り、対策の規模と効果を精査していかねばなりません。財政の持続性の確保こそ国力の源泉だと思います。

 

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