かわら版 No.1390 『遅くて的外れな対応』
2023/12/251年を振り返り最も印象に残った迷場面は、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の日韓戦始球式でした。岸田文雄総理大臣が砲丸投げのような投法で放り投げた超スローボールは、山なりの弧を描いて3塁側に大きく逸れていきました。捕手役の栗山英機・侍ジャパン監督が慌てて捕球に走るほどの大暴投でした。
岸田政権の今年の政権運営を象徴するようなシーンだったように思います。
まずは、長引く物価高への対応です。2023年通年の値上げ品目数は累計で3万2395品目となり、昨年の2万5768品目を上回る記録的な値上げラッシュとなりました。しかし、岸田政権が約17兆円の経済対策をとりまとめたのは11月。感度が鈍過ぎます。
その目玉政策である所得税減税の実施は来年6月です。超スロー対応です。しかも、お金が入ればすぐに消費する国民性の米国では減税効果はありますが、人生設計を踏まえて消費行動する日本では、減税の意義も効果も甚だ疑問です。
そして、自民党の裏金疑惑に対する総理の対応も、遅い上に的外れでした。パーティー券収入の過少記載や不記載は、政治資金規正法違反です。「法をつくる者は法を犯すべからず」の精神に反します。ましてやキックバックによる裏金づくりは脱税です。
しかし、岸田総理の初動は「派閥に丁寧な説明を指示」でした。党のトップとしての危機感がない他人事のような対応でした。各派閥への遠慮があったのかもしれません。
続いては、「派閥パーティーの開催自粛」でした。ほとぼりが冷めたら再開しようという考えなのでしょうか。全く反省の色が見えません。事実上の企業献金であるパーティーの禁止まで踏み込むべきです。
「岸田総理自身の派閥からの離脱」にいたっては、理解不能なパフォーマンスです。自民党の慣例に反して総理就任後も2年以上、「宏池会」の会長を続けてきました。党内から批判があっても意固地に居座ってきたのに、なぜこのタイミングで離脱するのでしょう。後継会長も決めていないのですから、事実上「岸田派」のままです。意味不明なことはやめて、率先して派閥解消すべきです。
「安倍派4大臣及び5副大臣の交代」は、悪手だと思います。政権運営は坂道で雪だるまをつくるのとよく似ています。政府・与党がみんなで力を合わせて雪玉を押し上げていかねばなりません。疲れたから手が冷たいからと手を抜く人がふえれば、雪玉は転げ落ち始めます。玉はどんどん大きくなり、支え手も耐えきれなくなります。最大派閥99人のやる気がなくなれば、政権は死に体です。
このように疑惑をめぐる総理の一連のスローな上に的外れな対応が、より混迷を深めました。来年は政治を正すために、思い切った政治改革を断行しなければなりません。その先頭に立つ決意です。
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