かわら版 No.1392 『波乱の年明け』
2024/01/15災害はいつどこで起きるかわかりませんが、まさか元日に最大震度7の能登半島地震が発生するとは…。女性アナウンサーの「今すぐ避難!」という絶叫型の呼びかけは鬼気迫るものがあり、正月気分は一気に吹き飛んでしまいました。
波乱の年明けの初動対応で、気になったことが2つあります。
まずは、石川県の対応です。馳浩知事は地震発生時は帰省のため在京しておりました。これは不運なことですが責められません。副知事らと緊密に連絡をとり、迅速に情報収集し的確に指示を出すことは可能です。
問題は県としての「非常事態宣言」の発令が、1月6日と遅かったことです。被害が大きい自治体への県職員派遣や、全職員一丸となって能登を救おうとする宣言は、もちろん意義があります。しかし、あまりにもスピード感に欠けていました。
次は、災害対応を担当する「内閣危機管理監」が折悪しくも、体調不良で入院中で官邸に出勤できなかったことです。内閣危機管理監はテロやハイジャック、大規模災害など緊急事態が発生した際に、内閣として必要な初動措置を判断し、関係省庁と迅速に総合調整することを任務としています。
いざという時に誰よりも早く官邸地下の危機管理センターに入らねばなりません。官邸近くに居住し、山手線の外側には出ないように生活しています。カラオケやサウナに行って通信不能にならないように、細心の注意も払っています。
その危機管理の司令塔が1~3日の初動で病欠だったことは、どのような影響があったのでしょうか。政府は「官房副長官補が代行したので支障はなかった」と説明していますが、もう少し落ち着いた時点でしっかり検証すべきです。
被災自治体に対する他の地方公共団体の支援は、スピーディーかつ質量ともに充実してきていると思います。
熊谷俊人・千葉県知事は特に敏速でした。1月4日には、県職員3名を石川県珠洲市に先遣隊として派遣しました。そして、市職員のほとんどが被災したため著しく行政機能が低下していることを知り、翌5日には更に県職員17名を珠洲市に派遣することを決めました。
その後も、保健師や災害派遣精神医療チーム(DPAT)などを次々と派遣しています。被災自治体への支援は「助けると同時に、自分たちも学ぶ」ことに意義があります。各地への支援の積み重ねは、自己の防災力の向上につながると思います。
東日本大震災の発災時、私は財務大臣でした。米軍のトモダチ作戦や台湾の桁違いの義援金には感動しました。それ以上にどこの政府よりも迅速かつ的確な支援をしてくれた民間企業には感服しました。
世界最大のスーパーマーケットチェーンの「ウォルマート」でした。大量の支援物資を自己調達の船で届けてくれました。世界で災害があるたびに同様の支援をしているのでしょう。見事な手際の良さでした。わが国も官民ともに被災地支援の経験を生かすべきです。