詳細 | かわら版 | 衆議院議員 野田 よしひこ

かわら版 No.1404 『異次元緩和の終わり』

2024/04/08

  2012年末、「輪転機をぐるぐる回して、日銀に無制限にお札を刷ってもらう」と公言する第2次安倍政権が発足しました。翌年4月に黒田東彦氏が日本銀行総裁に選ばれ、「2%の物価目標を2年で達成する」というバズーカの号砲とともに異次元の金融緩和が始まりました。


  当初は過度な円高が是正されたり、企業収益が改善したり、株価が上昇したりしました。しかし、肝心な物価は動きませんでした。焦った日銀は2016年にマイナス金利やイールドカーブコントロール(YCC)を相次いで導入し、緩和強化に突き進みました。


  黒田前総裁の2期10年の任期中は、金融政策を正常化するための出口戦略を語ることすら封印されていました。が、昨春に植田和男氏が新総裁に就任し、ようやく先月の金融政策決定会合において異次元緩和に終止符が打たれました。


  消費者物価は2021年9月からずっと上昇し続けています。日銀が目標としてきた2%の物価上昇も2022年4月以降達成し続けています。原油高や円安が原因であり、緩和効果ではありませんが…。


  私は、黒田前総裁の任期終盤に政策変更すべきだったと思います。金融政策一辺倒では簡単に物価は上がらないことは既に自明でした。にもかかわらず頑なで硬直的な姿勢は変わりませんでした。降板するピッチャーが自分の足跡がついたマウンドを平らにならすように、次の登板者への気配りがあって然るべきでした。


  植田総裁が約1年かけて周到な準備をした上で、異次元緩和を終結したことは評価します。前総裁はサプライズ緩和を多用しましたが、現総裁は市場に生じた不意打ちのトラウマを克服し、市場との丁寧な対話もしています。


  11年もの長きにわたって異次元緩和に固執したため、インフレ退治が世界の潮流になっている時に日本の金融政策はガラパゴス化しました。短期金利をマイナスに釘付けし、大量の国債買いで長期金利を操作する国は世界で唯一でした。ようやく「井の中の蛙」を脱することになります。


  異常な金融政策の最大の副作用は、財政規律の低下です。日銀の事実上の財政ファイナンスに甘え、超低金利のぬるま湯につかった政府は、金利のある世界に直面し巨額の利払いに向き合わねばならなくなりました。財政健全化を怠れば忽ち「湯の中の蛙」(ゆでガエル)になります。


  国債発行残高の過半は日本銀行が保有しています。その額は約580兆円。ETF(上場投資信託)も簿価で37兆円、時価で71兆円も保有しています。肥大化したバランスシートの縮小も大きな課題です。


  黒田前総裁は日銀による国債やETFの大量購入について、「何の反省もないし、負の遺産だとも思っていない」と語っていました。異次元緩和の遺産をどうするのか、4月10日の衆院財金委で植田現総裁にお尋ねしようと思います。


  

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