かわら版 No.1455 『党首討論第2R』
2025/05/19内閣総理大臣と野党党首が論戦を行う「党首討論」は国会審議の活性化をめざし、イギリス議会の「クエスチョン・タイム」(QT)を参考に2000年(平成12年)に導入されました。
国会会期中、総理が本会議や予算委員会などに出席する週を除き、週1回45分間、水曜日の午後3時から開催するとの与野党の申し合わせは、残念ながら形骸化しています。導入年の8回開催が最高で、以降は減少傾向にあります。
かつて、私が総理大臣だった頃、党首討論は4回行われました。谷垣禎一自民党総裁とは3回。激しい論戦を交わしましたが、嚙み合った実りある議論ができました。相性が合っていたのでしょう。安倍晋三当時の自民党総裁とは1回。火花散るような真剣勝負でした。
当時は、衆院では与党議員の数が多かったけれども、参院では野党議員の数が多い「ねじれ国会」でした。ですから、平場の議論で与野党が膠着状態に陥りがちでした。そのような局面を打開するためにトップ同士が討論し、一致点を見出す絶好の舞台が党首討論でした。
その後の第2次安倍政権は、衆参両院とも与党が多数を占める恵まれた状況でしたので、野党の意見は受け流すだけで済むようになりました。その結果、党首討論の「歴史的使命が終わった」と、言われるようになりました。
菅義偉、岸田文雄の両政権下では、党首討論は各1回開催にとどまりました。近年はますます真剣勝負を避ける傾向が強まっていました。が、石破茂政権は衆議院では少数与党政権ですので、党首討論に積極的な姿勢を示しています。
石破政権発足直後の昨年10月9日、臨時国会の最終日に党首討論が行われました。今国会においても、既に4月23日に開催されました。私は「国難」ともいうべきトランプ関税について、総理の足を引っ張るのではなくお尻をたたく観点から討論しました。その討論の直前、蓮舫さんからバナナと紅茶が届きました。
2012年4月10日、私は総理公邸で訪日した英国のキャメロン首相と会食しました。翌日が谷垣総裁らとの党首討論でしたので、QTの本場で経験豊富な英国首相に討論に勝つ秘策を伝授してもらいました。
第1は、小腹がすいていては戦いにならないので、バナナを食べておけ。第2は、緊張は禁物なので、リラックスのために砂糖を入れて紅茶を飲め。第3は、戦術的なことなので公表できません。このエピソードを蓮舫さんは覚えていたようです。優しい心づかいに感激しました。
5月21日、今国会2回めの党首討論が開催されます。また、直前にバナナを食し紅茶を飲んで臨みます。社会保障、物価高対策、消費税などで火花散る真剣勝負を挑み、党利党略を超えて一致点を見出したいものです。