
かわら版 No.1481 『円安、債券安。』
2025/11/25
食料品を中心に物価高が続いています。内閣府が17日発表した7~9月期の国内総生産(GDP)の速報値は、年率換算で1.8%減。6四半期ぶりのマイナス成長となりました。物価高・経済対策は待ったなしの切羽詰まった状況です。
高市政権は21日、長い政治空白を経て、ようやく総合経済対策を閣議決定しました。その規模は21.3兆円。財源の裏付けとなる補正予算案の一般会計歳出は17.7兆円。昨年度の13.9兆円を上回ります。この財政拡大路線に対し、マーケットが警鐘を鳴らし始めました。
まずは円安の加速。先週末の東京外国為替市場で対ドル円相場は、一時、1ドル=157円台後半をつけました。約10か月ぶりの円安水準です。高市総理が自民党総裁に選ばれて以降、10円超も円が売られています。
対ユーロも1ユーロ=181円台後半をつけ、1999年に通貨ユーロが導入されて以来、過去最安値となりました。
しかし、「通貨の番人」であるべき日本銀行は立ちすくんでいます。高市総理が安倍政権時代に自民党の政調会長を務められていた際、大規模な金融緩和の実行を迫るため、日銀総裁に対する解任権の導入を示唆するなど、日銀の独立性を脅かすことも厭わないほど強硬な金融緩和論者だからです。
放漫財政による財政悪化の懸念が、円売りに歯止めがかからない状況を生み出しています。行き過ぎた円安は輸入物価の上昇を通じて、家計の負担増をもたらします。国民、とりわけ、中・低所得者層は、インフレに耐えられません。
次に債券安。国内債券市場では長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りが一時1.8%台に上昇(価格は下落)し、2008年6月以来約17年半ぶりの水準に達しました。財政懸念を反映しやすい超長期債も売られ、新発30年物国債の利回りは過去最高となりました。
高市総理は「鉄の女」の異名を持つマーガレット・サッチャー元英国首相(ヨーロッパ及び先進国初の女性首相)を尊敬しています。しかし、財源の裏づけのない政策を発表し、イギリスの金融市場を混乱させた2022年の「トラス・ショック」を想起してしまう状況です。リズ・トラス首相の再来とならなければいいのですが…。
高市総理は、自他ともに認める「アベノミクス」の継承者です。アベノミクスは「デフレ脱却」のための壮大な社会実験でしたが、止め時を見失いだらだらと続けたことで、格差拡大など様々な課題を引き起こしました。
その上、インフレの時代に金融緩和と積極財政を推進することは、物価高を助長するだけで逆効果だと思います。立憲民主党は規模ありきではなく、8.9兆円の的を絞った経済対策をとりまとめました。バラマキとは一線を画し、賢い支出にこだわりました。