
かわら版 No.1508 『立法事実』
2026/07/06
私は、国旗を大切に思う気持を強く持っています。しかし、「国旗損壊処罰法案」には賛同できません。法案を提出した議員が「成立を機に愛国心も醸成されていく」と述べていましたが、罰則で脅して国旗への敬意や国を愛する心が生まれるとは思いません。
また、国旗を損壊する事例が多発し、社会問題化しているのでしょうか。私は、寡聞にして知りません。法律を制定する必要性や正当性を示す根拠、すなわち「立法事実」もありません。
皇族数確保のための皇室典範改正でも、立法事実が問われるべきです。
女性皇族が結婚後も皇室に残れるようにする案には、間違いなく立法事実があります。現典範の第12条は皇族女子が一般国民と結婚したときは、皇族の身分を離れると定めています。したがって、典範を改正しないと、愛子さまや佳子さまなど5人の独身女性皇族が結婚して皇室を去れば、次世代の皇族は悠仁親王殿下だけになってしまいます。
5人の方々が現行制度の下で人生を歩んで来られたことに鑑み、経過措置として、皇族の身分を保持するか否かについて、その御意向を尊重することを前提に、結婚後も皇室に残れる選択ができるようにすべきです。
昭和22年(1947年)10月に皇籍を離脱した旧11宮家の男系男子を養子として皇族に復帰させる案には、立法事実があるのかどうか疑問です。対象は旧宮家の子孫で妻や子がいない15歳以上の男子。要件としては該当者がいるかもしれませんが、ポイントは養子になる意思があるかどうかです。
国民として有している権利や自由を失い、キャリアを捨ててまで、「養子皇族男子」になろうという人がいるのかどうか、意思を慎重に確認した上で、制度設計すべきです。対象者が不明なまま、具体的な設計をすることはできません。
さらには、皇族には認められてこなかった養子縁組を可能にしても、養子を迎える養親になろうという皇族がいらっしゃるのでしょうか。皇族方のご意思を確認してきた形跡はありません。この点においても立法事実がないのかもしれません。
逆の心配もあります。昨秋、突然に三笠宮寛仁親王妃家という新しい宮家が創設され、麻生元総理の妹である信子さまが当主に就かれましたが、信子さまが養親になる意思があれば縁組を進めて良いのでしょうか。
政府がまとめた皇室典範改正案には、衆参正副議長がまとめた「立法府の総意」には記載がないにもかかわらず、養子の子孫が男子であれば皇位継承資格を持つことが盛り込まれました。
平安時代の藤原家のように、令和は麻生家が「この世をばわが世とぞ思ふ」時代になるのでしょうか。養子が皇統の紊乱を防ぐ等のために皇室典範で認められてこなかったことを重く受け止めるべきです。